パワハラ110番

“パワハラ取締法”は存在しない!

「パワハラ」という言葉が当たり前のように使われる時代。
上司からの嫌がらせや、教育の範疇を超えたスパルタ指導に
「パワハラで訴えてやる!」なんて勢い込んでいる人も…。

 

こうなると、あたかも「パワハラ取締法」のような法律があるかのように
勘違いしてしまいがちですが、
現状、パワハラを直接取り締まる法律はありません。

 

パワハラ被害は、その被害内容に応じて、刑事上では

 

名誉毀損罪(刑法第230条)
侮辱罪(同法第231条)
暴行罪(同法204条)
傷害罪(同法204条)

 

…等で告訴を行い、加害者に対する刑事処罰を求めます。

 

また、民事上では、不法行為に基づく
損害賠償請求(民法第709条)をすることが可能です。

 

さらに、著しいパワハラ行為によって
結果的に退職せざるを得ない状況に追い込まれてしまった場合には
「特定受給資格者」(雇用保険法第23条第3項第2号)が適用され、
雇用保険法上の失業給付を受けられることがあります。

パワハラ被害を証明するのは難しい

すでにお伝えしたように、パワハラの被害を法律的に証明するためには、
刑法や民法の力を借りることになります。

 

ただし、パワハラ被害に遭っているからといって全てのケースが
刑事上・民事上の責任追及を認められるという訳ではありません!
法律の力でパワハラ加害者に責任を追及するためには、
それなりの証拠が必要です。

 

まず、
「いつ」
「どこで」
「誰に」
「どのようなパワハラ行為を受けたのか」
メモやボイスレコーダーで記録しておきましょう。

 

また、あなたがパワハラに遭っていたという事実を証明してくれる
第三者を確保しておくことも大切です。

 

さらに、パワハラによるストレスが原因で
心身に何らかの症状が現れた場合は、
専門の医療機関を受診して診断書を出してもらうようにしてください。

 

これらの前提が揃って初めて、次のアクションに移ることが可能です。
刑事上の責任追及をする場合には、
前述した証拠を揃えて所轄の警察署に告訴状を提出します。

 

この時のポイントは、“処罰感情”を明確に示すこと!
あなたの処罰感情が伴わない申告は、
法律の上では単なる「被害届」で終わってしまいます。
この被害届を出しただけでは、基本的に警察は動いてくれません。
なぜなら、法律上は、
「警察が対応しなければならない」という義務が発生しないからです。

 

加害者を法律で裁きたいのであれば、
あくまでも告訴状として提出することが必須なのです。

 

一方、 民事上の責任追及をする場合には、
相手に「内容証明」を送って話合いの場を設けたり、
裁判を起こしたりすることになります。
精神的損害に対する慰謝料や治療費、
パワハラで会社を休んでいた間の給料などを
「損害賠償」として請求することができます。

会社側を罰する法律もある!

パワハラが成立するかどうかを判断する
基準があることをご存知でしょうか?
「上司に怒鳴られた」というだけでは、
「パワハラだ!」と主張することはできません。

 

パワハラだと判断するには、
次の4つの基準を満たしていることが大前提となります。

 

@加害者・被害者の間に、社会環境内における“上下関係”がある

 

A職場の“上下関係”を背景として、本来の業務範囲を超えた
“権力(Power)”の行使がある

 

B権力(Power)の行使が継続的に行われており、
その行為が被害者の人権を違法に侵害している

 

C継続的に行われる行為によって精神的・肉体的損害を被っており、
雇用の継続に不安が生じている

 

この条件を満たす場合、被害者は上司だけではなく
会社に対しても法律的な責任を求めることができます。

 

会社は、パワハラを行っている上司を使って利益を上げてわけですから、
会社側が無関係でいられるハズがありません。
考えてみれば、何らかのリスクを負うのは当然ですよね!

 

具体的には、民法715条に基づいて会社側に慰謝料を請求することが可能。
これなら、もしもパワハラ上司が破産状態であったとしても、
同じ金額を会社側に請求できるというメリットがあります。

 

パワハラは法律的に解決することが難しいと言われていますが、
被害者の味方になってくれる法律もちゃんと存在しているんですよね☆