パワハラ110番

歴史が浅い“パワハラ”

今や、社会問題のひとつと言っても過言ではない“パワハラ”。
職場において、上司⇒部下、同僚⇒同僚、あるいは部下⇒同僚
という構図で行われる「嫌がらせ」を意味するパワハラですが、
その手口は巧妙かつ陰湿にものへとエスカレートしていると言われています。

 

パワハラ被害者の中には「うつ」などの精神疾患を発症する人も多く、
最悪の場合は自殺という道を選んでしまう人もいます。

 

こういった事例の増加に伴い
パワハラ事件に関する裁判例も徐々に増えつつありますが、
セクハラと比較するとパワハラの歴史はまだまだ浅く、
裁判例も少ないようです。

 

しかし、2007年10月には、
パワハラが原因で自殺した男性に対して労災を認める判決が下り、
これをキッカケにパワハラに対する世間の見方も大きく変化しました。

 

現在の日本にはパワハラ行為を直接罰する法律がないため、
長らく「パワハラ事件の立件は難しい」と言われ続けてきましたが、
この判例は多くの労働者に勇気と希望を与えました。

 

確かに他の事例と比較すると、
パワハラ事件は解決が困難だと言わざるを得ません。

 

しかし、緻密な情報収集を行う冷静さと、
自分を信じる強さがあれば、不可能はないのです。

 

※ただし、裁判は素人が1人で立ち向かって勝てるほど
甘いものではありません。
「これはパワハラかもしれない」
「絶対に許したくない」
「許せない」
と感じたら専門の弁護士に相談しましょう。

パワハラの裁判例を見てみよう

パワハラに関する事件は、まだまだ裁判例が少ないとはいえ
勝訴している例も数多くあります。

 

どんな会社でどんなパワハラ行為があり、
どんな判決が下されたのか…気になりませんか?

 

ここでは、代表的なパワハラ裁判例をご紹介していきます。

 

●川崎市水道局事件
パワハラの裁判例で特に有名な事件です。
上司3人に職場でパワハラ行為(嫌がらせやいじめ)を受けた職員が、
精神障害を発症して自殺したという事件。
被告である川崎市には、「安全配慮義務違反」が認められました。
(平成15年3月判決)

 

●国際信販事件
被害者を退職に追い込むため、
あらぬ噂を流したり過重な勤務を強いたり、
さらには人格を否定するような発言を行ったり。
被害者は、精神的ストレスにより精神的に追い込まれ、
退職を余儀なくされました。

 

…そんな陰湿なパワハラ行為を裁いたのがこの裁判例。
会社側には、約2,600,000円の賠償支払いが命ぜられました。
(平成14年7月判決)

 

●松蔭学園事件
一般企業ではなく、学校で起きた事件です。
被害者は、約5年もの間クラス担任を含む一切の仕事から外され、
さらにその後の7年は自宅研修を命ぜられたのだとか。
これは明らかも嫌がらせ行為で、パワハラ以外の何物でもありません。
学校側は、6,000,000円の賠償金を請求されました。
(平成4年6月判決)

 

●ネスレ事件
配置転換に応じない従業員に対して、
「トイレ以外はうろうろするな」「会社のノートを使うな」
などとパワハラ発言を繰り返し行ったという事例。
「社会通念状許しがたいもの」という判決が下され、
慰謝料として600,000円の支払いが確定しています。
(平成6年11月判決)

 

●日研化学事件
会社でのパワハラが原因で心を病んだ被害者が
自殺してしまったといういたましい事件です。
職場では、
「お前の存在が目ざわりなんだよ」
「頼むから消えてくれ」
「給料泥棒。お前なんかいても役に立たない」
…などとパワハラ発言が日常的に繰り返されていたのだとか。
これらの発言は、精神疾患を発症させるに値する程度の
過重な心理的負荷を与えていると判断され、労災が認定されました。
(平成19年10月判決)