パワハラ110番

行き過ぎた“教育”はパワハラにつながる

どこに会社にもある、“新人教育”
仕事のやり方、顧客との付き合い方、会社での立ち回り方…等々。
新人社員にとっては、何もかもが新しいことだらけです。

 

だからこそ、直接指導してくれる先輩社員を
100%頼りにしている部分が大きいハズ。

 

しかし、もし、その先輩社員がとんでもないパワハラ上司だったら…?

 

「教育と称して、どう考えても無理なノルマを課せられた」
「教育の一環として、ミスをすると暴力を振るわれた」
「“お前にはまだ早い”と、何も仕事をさせてもらえない」
「相談しても無視される」
…こういったトラブルは後を絶ちません。

 

上司側としては「厳しくすることは新人教育に必要なことだから」と、
自分がパワハラ行為をしていることを自覚していない人も多いのだとか。

 

また、被害者側の中にも、
“自分はパワハラを受けている”という自覚がないまま
次第に心を病んでいく方もいるのだそうです。

 

確かに「これは教育なのか、それともパワハラなのか?」
明確に定められているわけではないため、
パワハラ問題は判断が難しいのが特徴。

 

“愛の鞭”とはよく言ったものですが、
相手の受け止め方や相手のキャパシティーによっては
それが“拷問”になってしまう場合もあります。

 

自分の言動を相手がどう受け止めるか?

 

それを“想像する”ことも、新人教育にあたる先輩社員に求められる
力量の一つといえるのではないでしょうか?

パワハラが原因で起こった不幸な事件

教育と称したパワハラ行為は、時に人の命までも奪ってしまいます。

 

一つ目の例は、新潟県での例。
ホームセンターに販売員として採用された20代の男性が、
30代の上司によるパワハラ行為が原因でうつ病を発症し、
結果的に自殺してしまったのです。

 

被害者の男性は、
「おれはオメーには仕事を教えねーからな」
…などと激しくののしられたり、
「社員教育の範囲」として蹴られたり、
タバコの煙を吹きつけられたりしたこともあったといいます。

 

会社側は被害者の男性家族に対して謝罪したものの、
パワハラについては認めず
「社内教育の範囲であった」という主張を取り下げなかったのだとか。

 

男性の家族は、約4200万円の損害賠償を求める訴えを起こしています。

 

他にも、静岡県内の製薬会社に勤務していた30代の男性が
上司の暴言が原因でうつ病となり自殺。
この事例では、労災認定を求めていたにも関わらず
認定がなされなかったのだとか。

 

男性の妻は、労災を認めなかった労働基準監督署の処分取り消しを求めて提訴。
結果的に、東京地裁が国に処分の取り消しを命ずる
全国初の判決を出し、労災が認められました。

 

パワハラが原因で被害者の命が失われる事件は他にも発生しており、
パワハラに対する世間の見方を変えるキッカケにもなりました。

 

各企業や自治体では、パワハラを防止するための
様々な対策がとられるようになっています。

時代と共に変わる“教育”の在り方

教育のつもりでやっていたことが
「パワハラだ!」と大騒ぎされてしまったり、
自分は可愛がっていたつもりの新人が
ある日から突然会社に来なくなってしまったり…。

 

パワハラというとどうしても
被害者側の感情がクローズアップされてしまいがちですが、
自覚がないまま加害者にされてしまう側の
ショックや葛藤も相当なものであるはずです。

 

「納得できない!」という方や異論のある方も多いと思いますが、
この問題には「世代間の違いだから仕方がない」
諦めざるを得ない部分もあると思います。

 

戦時中や、戦争直後の高度成長時代を生きてきた方にとっては、
「近頃の若者は甘いのだ」と嘆く方もいらっしゃるでしょう。
しかし、昔と今は違います。

 

「ゆとり世代だから怒られるとすぐにへこたれるんだ」
と言う方もいるかもしれませんが、
その“ゆとり教育”を提唱したのは若者たちではないのです。
ゆとり教育が当然の時代を生きてきた若者たちが、
団塊の世代の方よりも怒られ下手なのは仕方がないことではないでしょうか。

 

パワハラトラブルを起こさないためには、
教育する側も世代間の違いを十分に意識する必要がありあす。

 

例えば「叱った後は良い面を見つけて誉める」
「叱り方を工夫する」
「言葉に気を付ける」など、
ほんの少しの心がけで相手の受け取り方は変わってきます。

 

教育とパワハラは紙一重。

 

これを常に頭の片隅に置いておく必要があるでしょう。