パワハラ110番

労災とは何か

パワハラ関連の裁判で必ずといっていいほど挙がるのが「労災」というキーワード。労災とは、「労働災害」の略で、業務遂行中あるいは業務に起因するケガや病気、さらには障害、死亡に至る災害のことをいいます。よく「労災認定が下りるかどうか」という表現が使われますが、これは、労働災害として労働基準監督署に認定されるかどうかということです。労災として認定されると、「労災保険(労働者災害補償保険)」による様々な補償が受けられますので、そのケガや病気が労災として認められるか否かで被害者側の負担はかなり違ってきます。
この「労災認定」は、裁判でもしばしば争点となる問題。就業時間中に限らず、通勤途上の災害が労災とされる場合もありますし、たとえ仕事後の飲み会帰りにケガをしたとしても、業務命令的に飲み会に参加させられていた場合は、労災認定される可能性があります。

意外と身近な「労災」

裁判沙汰の問題にまでは発展しないにしても、働く人々は「常に労災と隣り合わせ」と言っても過言ではありません。高所作業やトンネル掘削がつきものの建設・土木業はもちろんのこと、操作ミスが命取りになり兼ねない製造ラインのオペレーター、社有車での事故のリスクが高い営業職、視力低下や肩こりに悩まされるSEやPG。「私は事務職だから大丈夫」という方でも、長時間パソコンのキーボードを打鍵し過ぎれば腱鞘炎になる可能性があります。また、仕事の重圧感や人間関係などのストレスから精神障がいを発症する可能性があるという意味では、全ての職種に労災のリスクがついて回ると言っても過言ではないでしょう。
このように、業務遂行中あるいは業務に起因するケガや病気、さらには障害、死亡に至る災害のことを「労働災害」の中でも特に「業務災害」と言います。一方、会社への通勤あるいは帰宅途中に事故に巻き込まれたという場合も労災に含まれ、こちらは「通勤災害」として区分されています。
裁判では、「業務災害」についての認定の可否が問題になるケースが多いようです。なぜなら、勤務時間中に起きた災害であっても、「業務との因果関係」(正式には「業務起因性」といいます)があるとはいえない場合には労災認定されないからです。例えば、昼休み中に会社の近くにお弁当を買いに行く途中にケガをしたとか、そのお弁当が原因で食中毒を起こした…等のケースは、業務遂行中とはみなされませんし、業務との因果関係もありません。また、地震などの自然災害は「不可抗力によるもの」とみなされ、認定から外れます。
「通勤災害」についても、通常の通勤ルートを大きく外れていたり、帰宅途中にどこかで飲食をした後に事故にあった場合には、労災認定されません。