パワハラ110番

入社当時の出来事

20XX年のXX月に契約社員として入社し、製造1課包装グループに配属された。同期にはMさんとTさんがいた。(その半年程前にMさんの姉Yさんも契約社員として入社していた)
Mさんは実に真摯に仕事に取り組んでいた。私よりかなり年下ではあったけれどそんな点を尊敬していた。時々仕事上の問題点や改善すべき点を話し合った。Tさんはそういう時に冷ややかな目を向けてきた。「自分たちは契約社員なんだからそんな事を話し合っても意味がない」とせせら笑われたこともある。

 

入社して2〜3年後頃だったと思うが、契約社員の中から2名が正社員に登用されることとなった。一人はYさんで、もう一人はTさんであった。Mさんも私も納得できなかった。私は年齢的なこともあって自分が正社員になることは最初からあきらめていた。だが、Tさんが「契約社員のうち誰かが正社員に登用されることになるかも知れない」という情報を得るや否や、人が変わったように真面目な仕事ぶりをアピールしてみたりするのを目の当たりにして嫌気がさした。
(本人にしてみればそんなつもりはなかったかも知れないが、私にはそう見えた)
こんなことなら最初から真面目に仕事に取り組んで欲しかったと私は思ったし、Mさんは「私は最初から朝のミーティングの時も一言も聞き漏らさないようにしてきたのに。あの人は新入社員の頃、(どうせ自分にはわからない話で関係ないといわんばかりに)目をつぶって半分寝ていた。」と言った。「正直者が馬鹿をみる(結局、要領がいい人の勝ち)とも言った。

 

余談だが、製造現場での出来事で印象に残っていることがあるので書きたい。
ある日、機械のトラブルが発生した為、工程責任者(三河さん)に連絡した。その際なぜかオペレーター(Mさん)の話を聞かずに、別室で作業中のTさんに「何が原因でトラブルが発生したと思うか?」と聞きに行った。Mさんは憤懣やるかたないし、私は「どうしてTさんに聞きにいくのか?Mさんがオペレーターを務めていて、詳しい状況を知っていたはずなのに」と思った。

 

結局、Mさんは処遇に不満で退職した。あんなに真剣に仕事に取り組んだ人がなぜ退職しなければいけなかったのかという疑問を感じて、それはその後何年も私を悩ませ続けた。
同僚や上司にそのことを愚痴ったこともあるが、当然のことながら何のプラスにもならなかった。
だが、私の気持ちは痛いほどわかると言って慰めてくれた人もいた。その人は「どんな基準で正社員に登用されるのか、上の人が何を考えているのかよくわからない」とも言った。

 

更に数年後(山崎さんが製造1課の課長であった頃)飲み会の席でたまたまYさんの仕事振りを誉めたら、それを聞いていた三河さんが怒り出した。
(なお、酒の席だが俺は今は素面だと前置きがあった)
「なんでYさんのことばっかり誉める!どうしてTさんのことは誉めない!あの人の仕事を見てみろ!柳田さんにあれだけのことができるか!」
Tさんのことを貶したならともかく、他の人を誉めただけで何故怒られるのかと思った。
山崎さんに後日、この件を話した。
この時の会話を正確には再現できないが、「あいつそんなことをいったのか。俺にまかせてくれ。」みたいな調子だったのを覚えている。ちょっとまずかったかなと思った。
三河さんに言われたことは納得できなかったが、だからといって課長から注意して欲しいかというと微妙だった。(実際何も考えてなかった。ただこの件を三河さん以外の上司の耳に入れたかっただけである。)だから「いいえ、そこまでは…」と言いかけたが、山崎さんは「大丈夫、悪いようにはしない」と言った。

 

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