いじめられた同僚の話 1
私以外にいじめられていた同僚Aさんの話です。彼女は会社でいじめを受けて、深刻な不眠症になってしまいました。Aさんは素直で容姿も愛らしく、面倒な仕事も自らすすんで引き受けるタイプの人でした。
ただ、27歳だったAさんは派遣社員の平均年齢からすれば若すぎて、他の派遣社員たちと価値観が合いませんでした。本人もそれを悩んでいて、会社に馴染もうと努力していましたが、本来の引っ込み思案な性格も相成って、なかなか溶け込めずにいました。Aさんと同じ年代でも、周囲に溶け込んでいる人もいましたが、Aさんはもともと人付き合いが上手いほうではなかったのです。特に自己表現と自己主張が苦手で、言葉で感情を表すことに苦労していました。自分で決めることや、自分がこうしたいということを人に伝えることがなかなかできないのです。
周囲と打ち解けることができないAさんが受けたいじめは、徹底的な「無視」でした。Aさんには声をかけません。均等に振り分けられる仕事もAさんには与えられず、会社全体の仕事にも支障が出ていました。真面目な性格のAさんは、皆がこのような無視を続けるのは自分が至らないのかと悩みました。悩めば悩むほど、自分に責任があるように感じられます。やがては悩みすぎて不眠症になってしまいます。いくら寝ようと努力しても、一日に2、3時間しか眠れません。それどころか、一睡もできない日も多くなりました。まぶたは腫れぼったく、いつも顔がむくんでいることを気にしていました。そうなると、当然体も弱っていきます。不眠症になってからもしばらくは会社に来ていましたが、そのうち体調不良が深刻となり、会社を2週間休むことになりました。
いつもは暇な会社なのに、Aさんが休んだときだけたまたま忙しい時期でした。それまではほぼ毎日定時で帰宅していましたが、そのときだけ数時間ほど残業する日続きました。それで、会社の人間の中から休んでいるAさんを非難する声が上がりました。もともと小柄なAさんが8キロ痩せて、申し訳なさそうに出勤してきたときも、周囲の態度は冷たく、無視は続きました。体調を気遣う言葉をかける人はほとんどいません。
結局、不眠症が酷くなったAさんは、その後も欠勤を繰り返すことになりました。すっかり健康を害したのです。家族からの強い反対もあって、会社を辞めることになりました。辞める前には私にいろいろと相談してくれたAさんですが、辞めてからはメールの返信もありません。彼女が幸せに暮らしていることを祈るばかりです。
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