パワハラ110番

斡旋(あっせん)って何?

職場での陰湿な嫌がらせ、“パワハラ”。
近年は、このパワハラが原因で休職や退職を余儀なくされている人も多いようですが、
もしもあなたがパワハラの被害に遭ってしまったらどうしますか?

 

真っ向から闘いますか?
それとも、泣き寝入りして新しい仕事を探しますか?

 

「自分は何も悪いことをしてないのだから」
…と、戦う決意を固める方もいらっしゃると思いますが、
パワハラ裁判には膨大な時間と労力、
そして経済的負担がかかることを覚悟しなければなりません。
当然のことながら、弁護士に依頼するにも、お金がかかるのです。

 

そんな事態になってしまった場合の選択肢の一つとして
ぜひ知っておいていただきたいのが、斡旋(あっせん)です。

 

「個別労働関係紛争の斡旋」という制度をご存知でしょうか?
これは、れっきとした公的制度。
例えばパワハラのように、使用者と労働者との間に
“当事者同士では解決できない問題”が発生した場合、
専門の「斡旋員」が間に入ってトラブルを解決してくれるという制度です。

 

ただでさえ、被害者・加害者の主張がぶつかり合って解決が難しいパワハラ問題。
第三者がまるくおさめてくれるのならば、それに越したことはありませんよね!
斡旋を行うのは、「紛争調整委員会」と呼ばれる機関。
なにやら、聞き慣れない名前ですが…
各都道府県労働局に置かれている組織のようです。

斡旋の手順とは

職場で起こったパワハラ問題を
「個別労働関係紛争の斡旋」制度で解決しようとする場合、
次のような手順を踏まなければなりません。
(ここでは、ざっくりとした手順を紹介します)

 

 

@まず都道府県の労働局総務部企画室、または
 最寄の労働局相談コーナーに相談しましょう。
 状況を正確に把握するため、細かい質問を受けると思います。
 この段階での助言や指導で解決すればそこで終了。
 もし解決が難しい場合に限り、
 「個別労働関係紛争のあっせん」が行われることになります。

 

A斡旋申請書を提出します。

 

B都道府県労働局長が、紛争調停委員会に斡旋を委任します。

 

C斡旋員、および斡旋の期日が決定します。

 

D斡旋が実施されます。
 具体的には、当事者双方からの事情聴取や当事者間の調整、
 斡旋案の提示などを行います。

 

E当事者双方が斡旋案に合意すれば、そこで円満な解決となります。

 

 

斡旋の特徴は、2カ月程度で約8〜9割のトラブルが解決するということ。
また、裁判とは異なり、弁護士費用などもかからず無料で解決できる点も魅力です。

斡旋で解決したパワハラ具体例

「斡旋ってなんぞや?」という疑問は、なんとなく解けたでしょうか?
しかし、言葉の意味が分かっても、
具体的にどんな風にパワハラ問題を解決していくのかよく分からない…
…という方も多いでしょう。
そこで、斡旋でパワハラを解決した具体例をご紹介しましょう。

 

 

★トラブルの概要
A社に派遣労働者として派遣されたBさん。
配属先の部署の上司が、感情や気分でつらく当たってきたり、
相談・質問しても無視したりするため、
次第にBさんは心身のバランスを崩してしまいました。

 

派遣先の部長や派遣元の担当者に相談をしても、
「あと3カ月頑張ってください」
と言うばかりでまともに対応してくれません。

 

思い悩み、とうとう会社に行けない状態になってしまいました。

 

そうこうする間に、派遣先の会社から契約打ち切りを言い渡されてしまったBさん。
精神的苦痛に対する補償および医療費の自己負担分の支払いを求めて、
斡旋申請書を提出しました。

 

 

★斡旋のポイント
派遣先、および派遣元の会社は、Bさんの性格も影響していると主張。
しかし、斡旋員は
「派遣先及び派遣元の対応が十分でなかった。
労働者に働きやすい環境を提供する努力を怠った」

…と指摘。Bさんに対して解決金を支払うよう提案し、和解を求めました。

 

 

★斡旋の結果
派遣元および派遣先がBさんに対してそれぞれ和解金提示。
Bさんも合意したため、解決となりました。

 

 

「パワハラなんて自分には関係のないこと」と思われがちですが、
明日は我が身かもしれません。
万が一のためにも、お金をかけずスピーディーにトラブルを解決できる
「斡旋」の制度を覚えておいて損はありません◎