パワハラ110番

些細な言葉が人の命を奪う…

もし、自分の大切な人が、
誰にも悩みを打ち明けられぬまま、ある日突然
自らの命を絶ってしまったら…。

 

縁起でもない話ですが、そんな想像をしてみたことはあるでしょうか?

 

「自殺なんて自分とは縁のないことだ」
と思っている方がほとんどかもしれませんが、
決して他人事ではありません。
死を覚悟するほど心をズタズタにされるということが
この日本でも起こっているのです。

 

ここ数年、10代の若者が学校でのいじめを苦に自殺するといった
痛ましい事件が相次いでいますが、
会社でも同じようなことが起こっています。

 

「お前なんか居るだけ邪魔だ」
「給料泥棒」
「お前のせいでみんな迷惑しているんだ」
…などといった暴言で人格を否定されたり、
時には暴力まで振るわれたり。

 

こういったパワハラ行為で心を病み、
生きる希望を失う人が後を絶たないのです。

 

2007年には、
「夫が自殺した原因は上司の暴言によるものだ」
として妻が国を相手に労災認定を求める訴訟を起こし、
勝訴したという事例もあります。

 

パワハラによる自殺で労災が認定されたのは、この例が初めて。
これは、「上司の言動は労災の対象になりうるもの」として、
世間の認識を変える大きなきっかけとなりました。

自殺を防ぐために、一人一人ができること

自殺は、本人はもちろんのこと
残された家族や周囲の人々の心にも深い傷跡を残します
パワハラによる自殺を防ぐためには、日頃からの心がけが大切です。

 

まず、上司の立場にある方々は、
「自分の言動は“教育”の範疇を超えていないだろうか?」
「自分は、指導に熱が入り過ぎていないだろうか」
とご自身の言動を振り返る癖をつけることをお勧めします。

 

…というのも、パワハラ上司のほとんどが、
「自分はパワハラをしている」という自覚がないからです。
「自分の若い頃も厳しく育てられたから」といった理由で
自分も部下をスパルタ教育している方が多いようですが、
時代や育った環境が違えば“受け止め方”も
“キャパシティー”も違います。
相手の様子をよく見て指導に当たりましょう。

 

一方、部下の立場にある人は、
日頃からストレスを溜めないように心がけましょう。
友達や家族に愚痴るのも良いでしょうし、
趣味や習い事などに熱中してパーっとウサ晴らしするのも良いでしょう。
とにかく、ON・OFFをしっかり切り替えることです。

 

万が一、「眠れない」「食欲がない」「起きられない」「笑えない」
「ダルくて仕事に集中できない」といった症状が出たら要注意!

 

心療内科や精神科など
「悩みを聴く専門家」を受診することをオススメします。

パワハラ自殺を防ぐために会社は何をすべき?

近年、パワハラの労災認定も珍しいことではなくなってきました。
それだけ、パワハラに対する世間の目は厳しいということ。
パワハラによって社員が自殺した…といった事態になれば、
その企業の在り方そのものが問われることになります。

 

実際、パワハラによって自殺者が出るような会社は、
人間関係の構図に問題があったり、社員の役割が不明瞭であったり、
社員の教育体制が不十分であったり、
コンプライアンスの体制が整っていなかったり、
CSR(企業の社会的責任)に対する意識が低かったり…と、
何らかの問題を抱えていることが多いのだとか。

 

パワハラによる自殺はもちろんのこと、
パワハラ行為自体を根絶させるためには、
会社の体制をしっかりと確立させることが必須です。

 

具体的には、パワハラ問題を専門に扱う相談室を作ったり、
管理職に対してメンタルヘルス関連の研修を行ったり、
職場環境についてのアンケート調査を実施したり…。

 

しかし、なにはさておき、社員同士がお互いの変化に気づくことができる
“風通しの良い職場環境”を作ることが最も重要な課題です。