パワハラ110番

判例が少なく、勝てる保証がない

職場のパワハラ問題は、年々増加しているとはいえ、
「裁判でパワハラを解決した」という事例はまだまだ少ないのが現状。
判例が少ない=パワハラ問題解決の経験が豊富な弁護士を見つけるのも難しい…
つまり、「必ず勝てる!」と期待できる弁護士の絶対数が少ないわけです。
これが、パワハラ裁判を起こすデメリットの一つと言えるでしょう。

 

弁護士探しは、よく、医者探しに例えられます。
なぜかと言えば、分野によって得手・不得手がありますし、
依頼人(患者)との相性によって結果が左右される面もあります。
パワハラ問題に関する事案をどれだけ扱ったことがあるのか、ということに加えて
過去にその弁護士が扱った判例、
その弁護士の人間性や自分との相性も含めてじっくり検討する必要があります。

 

ただ、どんなに優秀な弁護士がついてくれたとしても、
パワハラに限らず"裁判"では「必ず勝てる」という保証はありません。
「自分はパワハラの被害者だ」と思っていても、
裁判官を納得させられるだけの証拠がなければ負けてしまうこともります。
感情に訴えるだけではゼッタイに勝てません。

 

そのデメリットを受け入れられるかどうか?
そして、受け入れてもなお裁判に持ち込みたい!と思えるだけの
強い意志と信念がなければ、裁判に踏み切っても得るものは少なく、
失うもののほうが多いかもしれません。

プライバシーが侵害される

あちらこちらでパワハラの問題を耳にするようになった昨今、
ひとたび裁判沙汰になれば、
「○○社でこんなパワハラが!」
「へ〜、△△社ってそういう会社なんだ〜…」
と、世間の注目を集めることは間違いありません。(恰好のネタです…)
就職・転職活動をする際にも、「過去にパワハラ裁判があったかどうか」は
会社選びの重要なポイントの一つになりつつあります。

 

新聞や雑誌、TV、インターネットを通じて大々的に情報が流されてしまうわけですから、
被害者やその家族のプライバシーは否応なしに公にさらされてしまいます。

 

解せない話ですが、パワハラ行為があった企業側ではなく、
パワハラの被害者に対して嫌がらせをしたりする人も出てきます。
また、なにより、裁判の過程においては、
他人に知られたくない事実を打ち明けなければならない状況も出てくるでしょう。
隠しておきたいことも、"証拠"のために証言しなければならないかもしれません。
自分をよく知らない人が聞いたら誤解するような内容を
不特定多数の人に知られることを余儀なくされることも…。

 

そのようにプライバシーが侵害されることによって受ける精神的ダメージは
おそらく想像以上のものでしょう。

 

世間の好奇の目にさらされる…
このデメリットを受け入れる覚悟はありますか?

解決に至るまでの時間が長い

「裁判=年単位の長い時間がかかる」というイメージをお持ちではないでしょうか。
実際、TVのニュースなどでも
「事件発生から○年目にして無罪を勝ち取った」
…といった話題を耳にすることがありますよね。
そもそも、裁判はどの程度のペースで行われるのでしょう。

 

パワハラ裁判に限らず、裁判のほとんどは、1ヵ月に1回のペースで口頭弁論が行われ、
およそ3〜6カ月で"判決"に至ります。
しかし、話し合いが難航すれば1年、2年と年単位の時間を要しますし
二審、三審と進んでいき、判決までに10年を超える時間を費やす例もあります。

 

この「解決までの時間の長さ」も裁判のデメリットの一つ。
しかも、その期間中は、人によっては「ほぼ裁判にかかりっきり…」になってしまいます。
…というのも、裁判を続けている間は、書面を作成したり、証拠を収集したり、
弁護士と打ち合わせをしたり、裁判所まで出向いたり…と、とかく時間が取られがち。
仕事との両立がキツくなって休職や退職の道を選ぶ人も多いようです。

 

このようなデメリットも踏まえ、裁判を検討する場合は
「自分には長期に渡って裁判を継続していけるだけの時間的、
金銭的に余裕があるか?」

…という点をよく吟味し、自分を客観視することが大切です。