そのパワハラ、該当するのは“何” 裁判?
パワハラで裁判を起こす。
…口で言うほど簡単なことではありませんが、
仮に、そう決断した場合のことを想定して、
「どうすれば良いのか」考えてみましょう。
まず、自分のパワハラが、どの裁判の対象になるのか判断しましょう。
というのも、「裁判」といっても、実際には次の4種類があるからです。
全国の裁判所が受け付ける裁判のうち、約半数は民事裁判。
これは、生活に関する事件(要するに人間同士のトラブル)について行われる裁判で、
ベースになるのは民法です。
そして二つ目が、ドラマや小説でおなじみの刑事裁判。
刑法が適用される“犯罪事件”を取り扱う裁判です。
三つめは、家事裁判。
家庭における事件について行われる裁判で、「家事審判法」に基づきます。
最後は、少年裁判。
非行を犯した少年や、その可能性がある少年に対して
教育的配慮による処遇を求める裁判です。
パワハラ裁判を扱うのは、上記4種類のうち、民事裁判 or 刑事裁判。
いずれも原則的に3回まで行うことができることになっています(「三審制度」」
最初の裁判を「第一審」と呼び、
簡易裁判所、家庭裁判所、地方裁判所のいずれかで行われることになります。
その後、第一審での判決に不服ならば高等裁判所に「控訴」(第二審)。
それでも不服ということになれば、最後は最高裁判所へ「上告」します(第三審)。
民事裁判の場合
パワハラ被害で民事裁判を起こす場合、
まず、裁判所に訴状を提出することがスタート地点です。
「訴状」とは、のような内容で構成される書類のことです。
・原告と、訴えられる側である被告の住所・氏名
・原告がどのような審判を求めているのか、その請求内容の趣旨
・上記請求の原因(理由)
ちなみに、裁判に民事裁判で提出する訴状の書式は、
裁判所のサイトから書式をダウンロードすることも可能です。
裁判所>裁判手続きの案内>民事訴訟・少額訴訟で使う書式
※特に“パワハラ用”と限定された書式はありませんので
この内容を参考にして自作することになります。
この訴状は、裁判所用・自分用・相手方(被告)用に3通必要。
簡易裁判所で配布している書式は、3枚の複写式になっています。
刑事裁判の場合
パワハラ行為の中には、ぐる・蹴るなどの暴力行為や脅迫、
土下座を強要するといった侮辱行為…等、刑法に触れるケースも多々あります。
この場合は、刑事裁判の対象。
刑事告訴をして相手の処罰を求めることができます。
刑事告訴とは、犯罪の被害者本人や
その法定代理人(被害者が20歳未満の未成年の場合には、親)が、
警察官や労働基準監督署長などの捜査機関または検察官に対して
自分が受けた犯罪事実を申告し、犯罪者の処罰を求める「意思表示」のこと。
刑事訴訟法241条1項により、
「書面または口頭で、検察官または警察に」することになっています。
ちなみに、誤解されがちですが
警察に「被害届」を提出しただけでは告訴をしたことにはなりません!
被害届とは、あくまでも被害を申告することであり、
加害者の処罰を求める意思表示までは含まれていないからです。
被害届を受理しても、捜査機関には捜査する義務は発生しないのです。
ですから、パワハラ加害者に制裁を下したいと思うのであれば、
「告訴」=裁判に踏み切るする勇気が必要です。
法律上は口頭でも問題ないわけですが、スピーディーに対処してもらうためには、
「告訴状」を作成して捜査機関に提出するのがベスト。
…というのも、警察署や労働基準監督署は刑事告訴に積極的ではないからです。
なぜなら、証拠が十分に完備されていないと、
検察官から「証拠不十分」とみなされ「起訴」まで持ち込めないから。
捜査が無駄になることを恐れるため、
「なるべく刑事事件にせず、民事で解決してもらおう」という風潮があるのです。
ですから、口頭で「告訴したい」と申し出ても、説得されることも珍しくありません。
この「告訴状」には、主に次の内容を記載することが求められます。
・犯罪被害に遭った場所
・被害に遭った日時
・どのような被害にあったのか
実際に裁判に踏み切ろうとしても、記憶が曖昧で告訴できなかった…
という可能性も考えられますので、刑事事件に該当するパワハラ被害に遭った際は
その内容を詳しく書き留めておくと良いでしょう。
可能であれば、証拠品や、被害を証言してくれる証人を確保できるとベターです。
※被害者本人が死亡した場合は、その配偶者、直系の親族(親・子供・孫)、
兄弟姉妹が告訴→裁判に臨むことができます。