パワハラ110番

パワハラ被害者の「申立て」からスタート

パワハラ問題に関する労働審判の一連の流れは、
まずはパワハラ被害者が「申立て」をすることからスタートします。

 

「申立て」とは、簡単に言うと、

 

「会社でこんな事実があって、私は納得できないんです!
裁判所さん、なんとか解決してください!!」

 

…と、地方裁判所に依頼すること。

 

分かりやすく例を挙げると…

 

「○○会社で、私はこんな不当な理由で解雇されました」
「会社側はこんな主張をしています」
「しかし、それは、契約上のこのような理由で、違法性があります」
「交渉の機会を持ちましたが、交渉は決裂しました」
「なので、労働審判で解決して欲しいです」

 

…という具合に、
どのような事実があって、先方との間にどんな食い違いがあって
どのような交渉がなされたのか
…理論立てて説明する書類を作成し、
提出するのです。

 

申立てに使用する書式は、裁判所のHPからダウンロードすることができ、
個人でも作成が可能です。

 

東京地方裁判所のHPに掲載されている例

月1回の「審理」×最大3回

パワハラ被害者による“申立て”が受理されると、これを踏まえて、
いよいよ、パワハラ加害者である会社側との話し合いの場が
設定されるという流れになります。

 

いわゆる「審理」と呼ばれるもので、出席者は次の5人です。

 

・申立て人(パワハラ、他労働問題の被害者)
・企業側の代表者
・労働審判官(裁判官)1名
・労働審判員(最高裁判所から候補として任命された非常勤の国家公務員)2名

 

この5人が地方裁判所の一室に集まり、
申立ての内容について議論していきます。

 

“議論”と言っても、基本的には
労働審判官や審判員が申立て人や企業側代表者に対して質問を繰り返す
という流れ。
申立人・相手方のいずれかを退出させて、
それぞれ個別で話を聞く時間も設けられます。

 

こうして、双方の言い分の食い違いなどを整理し、
必要に応じて証拠調べも行うこともあります。

 

1回の審理は約2〜3時間。一般的には、だいたい月1回のペースですね。
これをMAX3回まで行い、調停による“和解”を目指します。

調停成立or労働審判

上記審理で、「じゃあ、そういうことで…」と、
双方が納得のいく妥協点を見出すことができるという流れに至れば、
調停は成立。
晴れて、「和解」ということになります。

 

しかし、人間、どうしても譲れないことってありますよね。
特にパワハラの場合は、

 

「パワハラについては認めて請求金額を出してやるから、その代り口外するなよ」
「会社側としては、どうしても請求金額満額は払えない。なぜなら…」

 

…などと条件をつけられると、気持ちの治まりがつかなかったりするものです。

 

そういう場合は、裁判で言うところの「判決」のような「審判」が下されます。
これは、審判委員会(審判官+審判員)から提示される“解決案”のようなもの。
法的効力をもったものですから、
これに従えないのであれば訴訟を起こすしかありません。
申立人でも、相手方でも、この「審判」の内容に不服があれば
異議を申し立てて通常訴訟(裁判)へ…
という流れで裁判に移行することができます。
(異議がなければ、提示された解決案で確定。労働審判はそこで終了です)

 

…このように、労働審判は
パワハラ裁判を起こすよりも流れがスムーズで解決までの時間も短い
のが最大のメリット。
ただし、あくまでも
「自分が請求したお金がもらえるかどうか」がポイントになりますので、
裁判のように「勝った!」とか「負けた!」とかいった結論には至りません。

 

そういった明確な勝敗にこだわるのであれば、
思い切って裁判に踏み切ったほうが
勝っても負けても納得できるかもしれませんね。