パワハラ110番

デメリット@ 要求が全て叶えられるとは限らない

パワハラで裁判を起こすことに比べれば、
格段にハードルが低いのが労働審判のメリット。
しかし、残念ながら、
要求事項が全て叶えられるわけではないというデメリットがあります。

 

特に顕著なのは、お金の問題。
請求した金額が満額もらえるのは、極めて稀なことです。
…というのも、労働審判の根底には、
「調停(和解)で解決する」というゴールがあるから。
例えば、50万円の賃金未払いがあって、これを巡って労働審判を起こした場合。
請求金額も同じく50万円なら、交渉の上限は50万円となり、
会社の主張によっては、50万円に満たない金額で歩み寄るしかありません。

 

もし、会社側が「どうしても40万円までしか出せません」と言えば、
「じゃあ、40万円で…」
と譲歩せざるを得ない状況に追い込まれる可能性もあります。
弁護士でもついていれば、これを打開できるテクニックもあるのでしょうが、
個人ベースの“話し合い”である労働審判となると、
妥協を余儀なくされることも多いでしょう。

 

この辺が、裁判とは異なるデメリットですね。

デメリットA 審判委員会のレベルには幅がある

労働審判は、もともとは労働者を守る目的で設立されたもの。
制度自体が労働問題に特化しているため、
結果も労働者に有利に終わるケースが多いのが特徴です。
パワハラ問題が取り上げられる機会が増加している昨今、
これからより注目度が高くなることが予想される制度と言えるでしょう。

 

ただ、この労働審判の結果を左右する“審判委員会”のレベルには
地域によって差があるという説もあります。

 

“審判委員会”は、地方裁判所の裁判官1名と
労働問題に詳しい審判員2名の、計3名で構成されます。
申立人であるパワハラ被害者と、相手先の企業の双方の言い分を整理しながら
最終的には“和解”に至らしめるという役割を担っているため、
パワハラをはじめ、労働に関するあらゆる法的知識、現場の状況などを
熟知していなければ的確な判断は下せません。
要するに、労働問題のプロフェッショナル集団であるべきなのです

 

ところが、地方裁判所によっては、
労働者よりも企業に有利な目線で判決(審判)を下したり
パワハラの現状を良く理解していなかったり…ということがあるよう。
労働審判は地方裁判所の管轄になるため、
このようなレベル差が生じやすいという点が
デメリットの一つとして挙げられるのです。

デメリットA 審判委員会のレベルには幅がある

言わずと知れた、労働審判のデメリット。
それは、内容を公表できないということです。
どういうことかと言うと…

 

試しに、「労働審判 パワハラ 事例」で検索してみてください。
「○○年に、○○企業で、
こんなパワハラ事例があって労働審判にかけられましたよ」
…という具体例は出てこないと思います。

 

これに対して、「裁判 パワハラ 事例」だと
具体的な企業名まで丸分かりですよね。
第一、裁判所のHPでも判例が紹介されているくらいですから…。

 

なぜ、労働審判は結果を公表できないのかと言えば、
それは「公表しない」ことを調停(和解)の条件にされてしまうから。
「パワハラの事実は認める。要求にも応じる。
その代り、このことは世間様には言ってくれるなよ」
…とうわけですね(笑)。

 

もしこの和解条件を無視して、
労働者側がパワハラの内容をネットで後悔したり
週刊誌にネタを売ったりすれば、
今度は自分が訴えられることにもなり兼ねません。
せっかく自分に有利な結果に終わったのに、
それ自体が白紙に戻って自分は不利な立場に追い込まれるかもしれない…

 

それを恐れるからこそ、誰も条件を破らないというわけ。
ブログなどにパワハラの体験をアップする際も、
企業や個人が特定できないように注意しなければなりません。

 

「あの大手メーカー、○○会社ではこんなパワハラが横行している!」
という事実を世間に知って欲しい、知らしめたい!という方には
労働審判は物足りない(&デメリットが多い)かもしれません。