パワハラ110番

調停で解決できなかった場合は…

パワハラ問題を争点とする労働審判のスタートは、
パワハラ被害者の“申立て”
その後、パワハラ加害者であるところの企業側が答弁書を出し、
地方裁判所で開催される第1回目の「審理」で合いまみえるということになります。

 

ここでは、労働審判委員会からの質問を中心に両者に“言い分”をすり合わせて
矛盾点や誤解を解きつつパワハラの問題を整理していくわけですが、
様々な誤解が解けてもなお、
「ゼッタイに譲れない!」という被害者もいるでしょう。
労働審判委員会から
「先方はこう言っていますが、納得できますか?」
「こうしたらどうでしょうか?」
…と調停案の提示があっても、双方とも拒否するというパターンもあるハズです。

 

例えば、パワハラ被害者は「解決金は○○円欲しい」と主張し、
対する会社側は「△△円しか支払えない」と拒否。
2〜3時間/回の審理を3回繰り返しても、双方が譲らない…。
労働審判は、そもそも究極的には“和解”を前提としているにも関わらず、
その目標地点にたどり着けないわけです。

 

そのように、調停で解決できない場合は、
労働審判委員会が、いわゆる「判決」を下すことになります。

調停が成立するのは約何割?

労働裁判において、審理の結果、調停が成立して和解するケースは
全体の約70%と言われています(事案はパワハラ問題に限定しません
残りの約20%が審判に進み、
そのうちの約半数が裁判(つまり、訴訟)に発展するのだとか。
(参考:最高裁判所行政局調べ)

 

ちなみに、審判に対する回答(受け入れるか、拒否するか)は、
その場ですぐに返事を迫られるようなシビアなものでははく、
2週間の猶予があります。
労働審判委員会が下した審判にどうしても納得ができない場合は、
2週間以内に異議の申し立てを行わなければなりません。

 

そして、この異議申立の受理と同時に、自動的に、通常の訴訟に移行します。

訴訟に発展したらどうなる?

労働審判の調停案に納得できず、結果的に訴訟を起こすことになった場合…。
これは、全体の約10%に過ぎませんし、
さらにここから本当に裁判に発展する例はほとんどありません。
妥協点を見出して一歩手前で思い止まる…というケースが多いようですね。

 

しかし、根が深いパワハラ被害の場合は、
「自分の立場を明確にしたい」
「自分が受けたパワハラの実態を世間に広く知らしめたい」
…との思いから訴訟に踏み切る人もいます。

 

その際、労働審判の調停→訴訟に移行する場合の準備として
次のことを念頭に置いておかなければなりません。

 

(東京地方裁判所のHPより)
6 訴訟移行後の準備について
労働審判に対して適法な異議の申立てがあったとき,
労働審判法23条により労働審判が取り消されたとき
又は同法24条1項により労働審判事件が終了したときは,
労働審判手続は訴訟に移行しますので,
その旨の通知等を受けた場合には,訴訟のための準備を進めてください。
なお,労働審判事件の記録は,訴訟には引き継がれません

 

 

…この“準備”とは、
労働審判の経過を反映した「訴状に代わる準備書面」のこと。
原告側(=申立人)の請求事項を裁判用に書き直し、
労働審判の過程での主張も加えて整理します。

 

この書類に、証拠書類一式も改めて添付して提出!
※基本的には、証拠書類の差し替えや番号の変更は許可されていません。

 

必ずしも労働審判の審判(判決)が覆る保証はありませんし、
労働審判とは比にならないくらいの時間とお金がかかります。
ハッキリ言って、訴訟を起こすならば相当強い覚悟が必要です。

 

調停にはゼッタイに応じられないという意志、
たとえ勝てなくても、立ち上がることに意味があるという信念。

 

…あなたにはありますか?