まずは“申立て”から
労働審判は、不利な立場に置かれがちな労働者を
救済するために作られた制度。
平成18年4月にできた、比較的新しい制度です。
(裁判所公式HP参照)
まだまだ知名度も低いようですが、パワハラ問題解決のためにも、
今後、積極的に利用されるべき制度です。
さて、では、
「労働審判を利用したい!」「このパワハラ事案を労働審判にかけたい!」
…そう思った時、具体的にどのような手続きを行えば良いのでしょうか。
最初にパワハラ被害者がやらなければならないのは、
「申立て」という手続きです。
読んで字のごとく、
「パワハラを受けています!」
という事実を申し立てるわけです。
どこでこの手続きをするかいうと、地方裁判所の本庁、及び、
一部の支部(東京地方裁判所立川支部、福岡地方裁判所小倉支部)
ということになります。
申立ての手続きに必要な書類
労働審判も裁判と同様、“法的な”制度ですから、
「口頭でパワハラの内容を説明して手続き終了!」
というような単純なものではありません。
まずは、「申立書」という正式な書類を提出しなければなりません。
ちなみに、申立て手続きに使用する書式(例)は、
裁判所のHPからPDF、Word形式でダウンロードすることができます。
手順:
【裁判所トップページ > 各地の裁判所 > 東京地方裁判所
>裁判手続きを利用する方へ > 東京地方裁判所(民事部)
> 労働審判手続 ■申立書】
「申立て」の手続きに関しては、次のような補足事項があります。
「申立書には,労働審判規則9条1項,2項の事項をもれなく記載するとともに,
同条3項の証拠書類の写しを添付してください。
また,できる限り,申立てを理 由づける事実についての主張と
それ以外の事実についての主張とを区別して,簡潔に記載してください。
(労働審判規則18条)
なお,申立書を提出する際には,相手方の数に3を加えた数の申立書の写しと
相手方の数の証拠書類の写しも併せて提出してください」
(裁判所の公式HPより抜粋)
添付資料も盛りだくさん!
上記で出てきた、「労働審判規則9条」とは、次のような内容です。
第九条 労働審判手続の申立書には、申立ての趣旨及び理由を記載するほか、
次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 予想される争点及び当該争点に関連する重要な事実
二 予想される争点ごとの証拠
三 当事者間においてされた交渉
(あっせんその他の手続においてされたものを含む。)
その他の申立てに至る経緯の概要
四 代理人(代理人がない場合にあっては、申立人)の住所の郵便番号及び
電話番号(ファクシミリの番号を含む。)
2 前項の申立書に記載する申立ての理由は、
申立てを特定するのに必要な事実
及び申立てを理由づける具体的な事実を含むものでなければならない。
3 予想される争点についての証拠書類があるときは、
その写しを第一項の申立書に添付しなければならない。
4 第一項の申立書を提出するには、これと同時に、
相手方の数に三を加えた数の当該申立書の写し及び
相手方の数と同数の前項の証拠書類の写しを提出しなければならない。
…つまり、労働審判の申立て手続きには、様々な添付資料が必要ということ!
パワハラで労働審判を起こす場合にも、
例えば雇用契約書、就業規則、給与明細、
場合よっては解雇通知書、販売成績書、申立人の「陳述書」…等が必要です。
陳述書とは、申立人やその関係者の言い分をまとめたものに
本人が署名押印した書面のこと。
これを作成するだけでも結構な手間暇がかかりますので、
裁判よりラクとはいえ、労働審判の手続きにも
それなりに骨が折れることを覚悟しておく必要があるでしょう。
必要な書類が揃ったら?
労働審判に必要な書類・資料一式がそろったら、
問題のパワハラ会社を管轄する「地方裁判所」に申立書一式を提出します。
これでひとまず、ファーストステップの手続きは終了です。
すると数日後、労働審判の第一回目期日について地方裁判所から電話が入ります。
(申立てから30日〜40日程度のところに設定されます)
日程が確定したら、次は、
パワハラ会社側から「答弁書」が送付されるのを待ちましょう。
答弁書:パワハラ被害者の申立ての内容を受けて相手方が作成するもの。
「この部分は認めるが、この部分については否認する」
…といった会社側からの反論が記載されており、
労働審判の争点を決めるカギになります。